村岡キミ子議員の質問(九月十八日)

【1】医療・福祉問題について

村岡 今月六日、新聞各紙が報じた、厚生労働省が検討している医療制度の改革案によれば、高齢者医療制度の対象年齢を七十歳から七十五歳に引き上げる、医療費の患者負担が一定限度を超えたとき、保険から払い戻しを受ける高額療養費についても、さらに上限を見直す、サラリーマンの本人負担を現在の二割から、三割に引き上げるなどの計画内容である。診療報酬の引き下げも検討課題になっており、これにより病院が経営を優先し、患者へのしわ寄せが増大することも懸念される。さらに、二〇〇三年度からは、健康保険料をボーナスもふくめた年収を基準に計算するという計画もとりだされている。このような政府案が実行に移されると、国民にとっては耐え難い大きな負担になる。医療費の増大は経済的負担だけでなく、受診抑制を引き起こすおそれがある。高齢者の自己負担増大による受診抑制はすでにはじまっている。多くの労働者が雇用不安に直面しているいま、受診抑制する傾向もある。高齢者の医療制度の対象年齢の引き上げ、健康保険本人三割負担への改悪などにたいしては、その中止を求める意見書を県から国へあげるべきではないか。
 本県では、六十七歳から六十九歳までの高齢者、三歳未満の乳幼児、重度の心身障害者、ひとり親家庭などにたいして県単独の助成が行われている。ところが、県の「財政の中期展望」によれば、県単独の補助金は見直しを徹底的にすすめるとしている。この「見直し」に福祉医療の補助金は含めるべきではない。

 乳幼児医療費は、市町村が独自に対象年齢を引き上げるケースも増えており、またその無料化についても全国的に拡充の傾向にある。少子化対策としても重要である。福祉医療は後退させない、という姿勢を県に示してもらいたい。先の六月議会でも全会一致で国への乳幼児医療無料化の実現をもとめる意見書を提出したが、県当局からも国へ強く働きかけることを要望する。また、県としても現在の三歳未満から就学前まで、対象を広げることも必要ではないか。
 ■白井福祉保健部長
 高齢化に伴う老人医療費の増大等により医療制度改革が不可避との観点から、現在、検討が進められている。県は、制度改正にあたり、地方財政への配慮、低所得者への配慮について、強く要望している。県では、財政健全化のための「財政運営プログラム」に基づき、あらゆる事務事業の評価検討を行っている。福祉医療費助成四事業についても、今後の限られた財源の中で、増大・多様化するニーズに対応するため、福祉施策全体で今後のあり方について検討する。


 【2】介護保険について
村岡 介護サービスの利用者は増加しているが、利用料の一割負担で必要量を利用できないのが現状。本県においても、介護認定を受けたが、今なおサービスを受けられる限度額の四割程度しか利用がない、と聞いている。負担軽減以外にこの矛盾を解決する方法はない。
 本県の国保加入者の約半数が所得百万円以下で、もともと低所得者が多いこと、長引く不況での経営悪化、失業、倒産に追い込まれる業者が相次ぐ中で、国保税を払いたくても払えない世帯が増えている。保険証が交付されず、資格証明書しかもたない被保険者数は、八月現在三千四百余、二年前から二百余増加している。これらの人々は窓口で医療費全額を払わねばならない。国保税を滞納しているために介護サービスが制限される。このような深刻なケースの増加が懸念される。
 今年十月から、六十五歳以上の一号被保険者の介護保険料満額徴収が実施される。次々と改悪される社会保障制度により病気を苦にした自殺が増えている。これまで減少させ続けてきた老人医療費、国保等の国庫負担を計画的にもとにもどすなど、国民のいのちと健康に責任を果たすべきだ。県は、低所得者の介護保険料・利用料の軽減措置を制度化するよう国に強く要望すること、そして県独自でも減免制度をつくることが必要と考えるがいかがか。
 ■白井福祉保健部長
 保険料及び利用料の県独自の減免制度創設については、現時点では困難だが、今後とも、国に対して恒常的な生活困窮者への減免要件の拡充など、低所得者に対する負担軽減を要望していく。県として、保険料については引き続き市町村との連携を図り、保険料について県民の理解を得られるよう努力する。滞納者に対しては実情に応じたきめ細かい納付相談を行うよう市町村に指導する。利用料についても、県民が必要な介護サービスを利用できるよう、県民への啓発、ケアマネージャーへの指導、介護サービスの充実等に更に努める。

【3】児童虐待問題について
 一. 児童相談所の児童福祉司の配置基準見直しについて

村岡 昨年十一月二十二日、児童虐待防止法が施行された。法制定とともに、学校、保育所等からの相談が増加し、平成九年度の十倍になっている。児童虐待にかかる相談、対応に中心的役割を担うのは、県子ども・障害者相談センター、紀南児童相談所である。児童福祉司の法的配置基準は、児童福祉法施行令では人口おおむね十万人から十三万人にひとりと定められているがこれは、一九五七年来、据え置きである。業務急増に見合った基準に改善すべきだと、日本共産党は国に強く求めてきた。基本的な法改正には至っていないが、地方交付税措置で人口一七〇万人に対し、児童福祉司の配置を現行十七人から十九人に増員。本県は、十一人から十二人に増員した。これは最低基準である。今後複雑化し、増加することが予測されているが、障害、非行、育成相談活動を含んだ相談にゆとりをもち、且つ緊急事態に対応できるのか。相談者と児童福祉司との間の信頼関係を確立することも重要。県は、国に児童福祉司の法的配置基準の見直しを求めるべきだ。
 ■白井福祉保健部長
 児童相談所では、増加する児童虐待の相談に対し職員一丸となって、通所指導、家庭訪問をはじめ被虐待児のケアや親に対する援助等きめ細かな対応に努めている。本県の児童福祉司は、現在十二名を配置しており、人口九万人弱に一名を配置している状況は、ほぼ全国平均である。虐待に関する相談件数は今後ますます増加すると思われ、実態に応じた児童福祉司の配置基準の見直しについて、国へも要望している。


二. 情緒障害児短期治療施設の整備について
村岡 厚生労働省は、虐待を受けた子どもなどの心理的ケアを必要とする専門的な認可施設として「情緒障害児短期治療施設」をすべての都道府県に最低一カ所、整備する必要があるとしている。新設困難な場合は、児童養護施設の定員の一部転換等による整備を促進することを求めているが、本県では、いずれの整備を考えているのか。
 ■白井福祉保健部長 情緒障害児短期治療施設は、軽度の情緒障害を有する児童を短期間入所、又は通所させ、心理療法や生活指導を行う施設。情緒の安定を図り、社会的な適応能力を回復することが必要とされる児童については、現在、児童養護施設や児童自立支援施設に入所させることで、生活指導を行うとともに、必要に応じて児童相談所職員や精神科医による継続的なカウンセリングを行っている。施設設置については、今後検討していくべき重要な課題。


三. 子育て支援策について
村岡 虐待をしているのは、実母が五〇%を占めている。平成十二年度で百六十件中、百一件。実父三十八件。現在ではまだ、子育ては母親に大きな負担を強いている。子育てに自信をなくし閉じこもる、周囲に相談する者もいないという状況に置かれた母親、特に二十代前半の若い母親の虐待が多いと聞く。身体的暴行、ネグレクト(保護怠慢、拒否)が多く、心理的虐待も増加傾向にあると聞いている。育児相談が気楽にできる支援が求められているが、本県ではどのような支援がおこなわれているのか。
 ■白井福祉保健部長 児童虐待の早期発見・早期対応のため、昨年度から、主任児童委員や保育所の関係者等四百二十四名を地域協力員として登録し、地域ぐるみで虐待防止に取り組むネットワークづくりをすすめている。また、保育所の有する専門的機能を活かし、地域に開かれた社会資源として子育ての中心的役割を果たすよう「地域子育て支援センター事業」を推進しているところである。さらに乳幼児健診時、育児相談を実施しており、子育てに問題が見られるようなケースについては、保健婦等による家庭訪問等も実施、虐待発生の予防・早期発見に努めている。乳幼児健診の受診率は九三%で未受診者についても、家庭訪問等対応している。二十代前半の若い母親による虐待が増えている件に関して、高校生を対象とした「乳児健診体験学習」の場を通して、命の尊さを実感してもらい、母性・父性の健全な育成をめざす事業も展開している。今後も、子育てに不安を抱える保護者を地域全体で支援していく。


四. 児童養護施設の職員配置基準の見直しと専門職の配置について
村岡 児童養護施設における職員配置基準では、国の基準は三歳児未満児が児童二人に対し保育士または児童指導員一人、三歳から就学前まで四人に対し一人、小学生以上は六人に一人となっている。この配置基準は一九七六年から改善されていない。施設職員は、すべての年齢に対し、二人にひとり、あるいは三人にひとりに改善し、とりわけ心のケアを重視することからも短期的には一人にひとりの配置が当然であると、見直しを切実に訴えている。また、専門職として看護婦の配置も切望されているが、養護施設協議会としても国へ要望しているので、県としても国に要請していただきたい。
 ■白井福祉保健部長 児童養護施設の職員配置基準は児童福祉施設最低基準で定められている。県内七カ所ある施設で、この基準はクリアしている。虐待等により児童養護施設に入所する児童が増加しており、看護婦の配置等は各施設から要望されている。近畿府県のブロック会議でも協議しつつ、国にも伝えていく。


【再質問】
村岡 ○県が国の制度の不足部分を補うという点で、高齢者の負担、子どもを持つ母親、障害者、母子・父子家庭の経済的負担を軽減するという趣旨の中で作られている福祉医療費助成四事業を堅持してほしい。今後、ひとり親家庭の場合、児童扶養手当が切り下げられる計画があると聞いている。その点からも、これからの日本、そして和歌山県政を担っていく子どもたちに対する医療費助成は、少子化という問題から考えても削ってはならない。重度の心身障害者医療については言うまでもない。三歳児以下の乳幼児医療無料化という現行の枠を就学前まで拡大することを要望する。
 ■白井福祉保健部長 福祉医療制度については、十分に議論、検討をする。


村岡 ○利用者は増えているが、負担増大が著しい現状のもとで六十五歳以上の高齢者の自殺者が年々増加している。平成十年は九十一名、十一年は九十四名、十二年は百五名、十二年は自殺者三百五十名中、六十五歳以上は百五名。今年八月末までの六十五歳以上の自殺者が、既に七十二名をこえていることからも、高齢者の生活、健康、命の問題としても注視していく必要がある。既に国に対し重点項目として要望はあげられているが、県はより積極的な姿勢をとるべき。国の制度に先立ち、本県でも低所得者に対し減免制度をつくっていただきたい。
 ■白井福祉保健部長 介護保険制度にかかる国への要望等について、しっかりと要望していきたい。


村岡 ○人的体制の公による対策が遅れている中、実態とかけ離れている現状のもと、児童相談所の児童福祉司、養護施設の職員は非常に苦労している。特に児童相談所では夜の相談が非常に増加傾向にある中、子どもたちを保護し、保護者の相談を受けとめて対応するという児童福祉司の努力はたいへんなものである。定められた職員設置基準をクリアしていればよいということではなく、児童福祉司が専門性をいかに発揮でき、そして和歌山県の虐待そのものを自らが解決していく先駆的な役割を果たすという立場を是非とも理解し、県独自でも増員していただきたい。
 ■白井福祉保健部長 国への要望等、しっかりと要望していきたい。